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鈴木治の世界
​文学の域に昇華した前衛陶芸

2025.9.6(土)〜11.3(日)

展示風景1(和代).jpg

寺尾作次郎 幼女風俗文鉢 1964

 鈴木はわが国前衛陶芸の第一人者です。

 敗戦後の1948年に八木一夫や山田光らと共に新しい陶芸の創造を目指して青年作陶家集団、走泥社を結成しました。器の口を閉じたらもっと自由で多様な造形が出来るのではないかと考えて作陶した鈴木は、1965年信楽土に赤い化粧土を施して焼締めた、泥像シリーズの作品を発表しました。次いで1969年透明感のある青白磁の作品を加え、その評価は確固たるものになりました。

 その作品は土偶、馬や鳥などの動物、雲や風などの自然現象をテーマに、文学的に表現したものが多く、緻密に計算されながら、古代の土偶の素朴さに通じるものがあります。埴輪がそうであるように私達に日本人の心を訴えかけます。彼の作陶は、用の美を見出す「使う陶」から、鑑賞する「観る陶」へと広がり、更に自分の心を詩歌に詠むように叙情的な文学の世界まで作品を高めています。
 これが究極の土の形、鈴木の「詠む陶」です。

 長年、鹿児島陶芸展の審査委員長として若い陶芸家達を薫陶し、鹿児島の陶芸界の発展に大きな足跡を残されました。鈴木は、実用性を持たない陶芸作品は、あくまでも陶芸固有の表現でなくてはならない、と教え導きました。
 一昨年には、京都国立近代美術館にて「走泥社再考 前衛陶芸が生まれた時代」が開催され、日本の陶芸史に及ぼした走泥社の足跡が再確認されました。

 鈴木は児玉美術館の自然をこよなく愛でて、来鹿の際にしばしば訪れては緑陰に座り、静かに構想を練る彼の姿がありました。
 経て益々輝きを放つ、鈴木作品の堂々たる新鮮さをご覧いただけたら幸甚です。

作品紹介

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この作品は1950年にパリのチェルヌスキ美術館で

開催された現代日本陶芸展に出品された。

2013年、巡回展「泥象 鈴木治の世界」に出品

黒絵細瓶 1950年

白釉扁壺花生 1950年

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鈴木は1965年に信楽の土を使った泥象シリーズを発表した。

『童子像』はその翌々年に制作された傑作のひとつと言える。

硬いなかに動きのある形は濃い赤銅色のなかに残された赤い円の色彩と相まって、若々しく極めて新鮮である。

この作品は鈴木の依頼により1999年に東京国立近代美術館で開催された「詩情のオブジェ・鈴木治の陶芸展」に出品された。

童子像 1967年

『はにわ』は当美術館が収蔵した鈴木の最初の作品である。

出合った時の印象は古代の埴輪は空虚で、鈴木のはにわは充実しているにも拘わらず、同じ日本の心を持ち合わせているのに驚いた。

また座布団に包んで抱きかかえてみると、抱かれ上手な子供のように私の懐にしっかりと納まった。

全ての無駄をなくして、頭をやや右に回したような巧みな造形に脱帽した。以来、鈴木の泥象作品に出会う度に胸のときめきを覚える。

この作品をもたらされた黒田陶苑の中井氏には感謝の言葉もない

はにわ 1981年

『汗馬』は1997年伊勢丹美術館で開催された鈴木治展のメインを飾った、記念すべき作品である。

千里を駆け抜けた汗馬が上を向いて力強く嘶く姿は、見る私達を圧倒する。

正に鈴木が追求し続けた馬の形の最高傑作の一つといえる。

この作品は鈴木の依頼により1999年に東京国立近代美術館工芸館で開催された「詩情のオブジェ・鈴木の陶芸展」に出品された。

汗馬 1996年

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